私は、グラディウス400というバイクのオーナーです。オーナー歴は既に6年程になるかと思います。
今まで10台弱のバイクを購入してきましたが、このバイクは最も長い保有歴…はGN125だったので、2番目の長さとなっております。
何故こんなに長く保有しているのかというと、「シンプルにこのバイク最高!!!!だから」です。グラディウスがいかに良いバイクかというのはこの記事の本質からズレてしまうので別記事にまかせるとして、それでは何故そんなに良いバイクがこんなにも不人気なのか…と思うのは自然なことかと思います。
というわけで今回は、何故 銘バイクであるグラディウス400がこんなに売れていないのか、について個人的な見解をまとめていこうと思います。
なぜ「スズキ グラディウス」は不人気車種になってしまったのか
明確な回答が公式に出ているわけではありませんが、個人的にはグラディウスが売れなかった理由は下記の8点だと思っています。
- 新車価格が高すぎた…
- 「SV」の名を付けず、「グラディウス」という名づけにしてしまった
- 当時はバイクに不遇の時代だった
- このバイクの強みを上手くアピールできなかった(スズキ広報サイド)
- 後継のSV650が発売されてしまった
- 2023年現在でもグラディウスの情報が少ないから
- 曲線が多いデザインで好みが分かれたから
- 完成されたエンジンで「面白さ」に欠けた
というわけで、それぞれ1つずつ見ていこうと思います!
理由1. 新車価格が高すぎた…
グラディウスが発売されたのは2009年で、新車価格は確か当時(2009年)で85万円程度の価格だったと思います。
一方で、同排気量クラスの大人気車種であるCB400SFは、当時(2010年)は新車価格が80万円だったようなので、CB400SFと同程度かもう少し高いというプライシングになっています。
これは…どうでしょうか、かたやCBという伝統ある名を冠した間違いない素性のバイク、かたや「グラディウス」という初めて名付けられたちょっと高いバイク… 皆さん、どちらを選びますか?今はバイクの素性が明らかになっていますが、当時、まだiPhoneが発売されたばかりの時代でYoutubeなどの動画コンテンツなども今ほど流行っていない時代で情報も少ないなか、このバイクを選択できたでしょうか?私ならなかなか難しいと思います。CBを選ぶんじゃないかと…
やはり、完全新規の車種として売り出し、他のバイクとの競争力を持たせるにはやはりもう少しプライシングはお求めやすくする必要があったかなと思います。
理由2.「SV」の名を付けず、「グラディウス」という名づけにしてしまった
これもかなりの「やらかし」かなと思っております。スズキが熟成させた最高のV型2気筒エンジンを積むシリーズはかねてより「SV」と名付けられておりました。というわけで、このバイクも「SV400」とすべきだったと思いますし、グラディウス(短剣)をモチーフにしたからグラディウスの名を入れたいということであれば、「SV400 Gladius」的なネーミングにすべきだったかなと。
しかし、スズキが採用した名称は「グラディウス400 (SFV400)」です。「SFV」のFってなんやねん!!というツッコミが入りそうですね。しかもSFVの名は日本では殆ど目にすることがありません。
SVシリーズといえば、日本のみならず海外でも有名で、日本では…残念ながらあまり人気というわけではありませんでしたが(日本は4気筒バイクが人気だった…)、海外ではかなりの人気を誇っていました(SV650の方です。400は日本ガラパゴス仕様なので)。
もし、グラディウスの車種名がSV400 Gladiusだったなら、きっとこのバイクの販売台数はもっと高かったでしょう…少なくとも、海外ではもっと売れていたはずです…!!
理由3. 当時はバイクに不遇の時代だった
グラディウス400が発売されたのは2009年であり、この時はバイク業界全体に対して逆風が吹いていた時期でした。
- リーマンショック後の不況
- 2006年から始まった駐車違反取締の民間委託によるバイク離れ
- (排ガス規制に伴う)バイク新車価格の上昇(によるバイク離れ)
今でも金融の世界で語られるリーマンショックが発生したのが2008年、その不況は2009年頃までしっかり影響を残しています。当時の日本のGDPは下記で、丁度その部分が不況だったことが分かります。
(この図だと分かりにくいですね)
また、2006年から駐車違反取締が民間委託されるようになり、バイクを簡単に駐車することができなくなりました。このあたりの駐車違反件数とバイク販売台数の推移を見ていると、面白いくらいの逆相関になります…
上記はバイクの販売台数推移ですが、2006年からの減りがエグイですね… 特に、2009年/2010年の軽2輪の前年比率は目も当てられません… 少し前までは年間10万台売っていたのに、2010年では1/3ほどの3.7万台まで急落しています。これは本当に急落です。こんなの…バイク業界終わりですよ…というくらい。ただ、思っていたよりも251cc~は思ったよりも減りが少ないんですね。
あと、今この推移を眺めていて初めて気づきましたが、直近2020年、2021年の販売台数の伸びがすごいですね。20数パーセントとは…
少し話がそれてしまいましたが、上記の社会的要因や、他にも2010年の排ガス規制があったりと、バイク業界全体へのマイナスインパクトがかなり多かったです。というわけで、もちろんグラディウスの販売台数も多く出ているわけが無く、せっかくの新車車種発売というタイミングではありましたが出鼻を挫かれたという悲しきデビューを飾ることになってしまいました。
こうしたスタートダッシュの失敗により、残念ながら名前が売れず、その後の販売台数もイマイチ…という結果に繋がったのではないかと思われます。
理由4. このバイクの強みを上手くアピールできなかった(スズキ広報サイド)
別記事にまとめようと思っていますが、グラディウス400には数多くの魅力的な点があります。しかし、時代背景などがありその魅力が上手く伝わらなかったかなと思います。
スズキ広報の方も、このバイクの本当の良さをアピールできていなかったのでは?と思います。出典は覚えていないのですが…グラディウスの魅力としてそのスタイリングを推していたような記憶があるのですが…そこじゃないと思うんですよね、プッシュすべきポイント。もちろん大事ではあると思うんですが…
丁度2009年~の時代は、スマホ普及に伴いSNSが少しずつ流行ってきたタイミングだったので、マーケティングなどをもう少し上手くやれれば…というのは流石に難しい話ですよね、分かってます、ええ。
理由5. 後継のSV650が発売されてしまった
2016年、「SV」の名を冠したグラディウス650の後継機が発売となりました。そういえば今まで触れてきませんでしたが、グラディウス400にはお兄ちゃんが居て、それがグラディウス650です。海外ではグラディウス650(SFV650)として発売されていました。
その後継となるSV650が発売されてしまいました。しかもグラディウス650よりも少しお求めやすい価格で。
こうなってくると、積極的にもグラディウスを買おうと思う人はかなり少なくなっていると思われます…かたやニューモデルでSVの名を冠したバイク、かたやモデルリリースから7年経過するもイマイチぱっとしなかったグラディウス、どちらのマシンを買うでしょうか…私なら…当時の環境で新車同士なら、すいません、SV買ってると思います…
グラディウス400の方なら、中免ユーザからの一定のニーズはあるかなと思いつつ、大型バイク免許保有者ならSV650を選びたくなりますよね。
理由6. 2023年現在でもグラディウスの情報が少ない
グラディウスが発売されたのは2009年で、公式から生産終了が発表されたのが2017年9月ということで、発売期間は8年程度とそこまで短くは無いと思いますが…それにしてもグラディウスに関する情報が極めて少ないです…
情報が少なければ新しいユーザーへの接点が減ってしまいますし、購入を検討している方も「このバイク大丈夫なんだろうか…」と不安を感じてしまうと思います。また、維持のためのメンテナンスのための情報を探ろうにも、あんまり情報がありません。私は出来るだけメンテナンス情報を発信しようとしていますが、なかなか…
例えば、グラディウスの冷却水交換や、タペット調整、スプロケット交換、フォークオーバーホール、リアサス交換などの情報を将来のために調べておこうかなとネット情報を探してみましたが、殆ど情報がありません。一部、バイクショップさんなどのブログで「こんなメンテナンスをしましたよ」の鬼端折り記事はありますが、その過程を丁寧に紹介したものなどはありませんでした。正直、後発のマシンであるSV650ABSなどの方が情報は多いくらいです。
やはり調べて情報が少ないというのは、新たなオーナーになる方からすると少しマイナスかなと思います。
理由7. 曲線が多いデザインで好みが分かれたから
グラディウスは2009年に発売されたバイクですが、この当時はまだヘッドライトが異形で、流線形を強く押し出したスタイリングのバイクはあまり多くありませんでした。その後数年し、ネイキッドタイプのバイクには丸目以外のマシンも増えてきましたが、当時はまだ異形ヘッドライトを持つバイクはかなり少なかったです。それに加えて全体がかなり丸みを帯びたスタイリングで、個人的にはかなり好みでしたが、所謂古典的なネイキッドバイクのイメージからすると結構攻めたスタイリングでした。
振り返ってみると、丸みを帯びたスタイリングが意識されたバイクって、不人気になることが多いような…
理由8. 完成されたエンジンで「面白さ」に欠けた
正直、このVツインエンジンは完成されています。完成され過ぎています。圧倒的な優等生エンジンです。
最高出力はその排気量クラスを考えるとかなりありますが、低速トルクも4気筒バイクなどと比べると高く、エンジンからの振動もノイズも少なく、アクセルに対してリニアにストレスなくふけ上がるシルキーさなどなど、このエンジンは完成度が高いという印象を受けます。
が。
それがゆえに、イマイチ「面白さ」は少ないかもなあ…と思ったりもします。優等生君なんですよね。
4気筒バイクのように「低速ではそんなにパワー無いけど、中回転からパワーがめっちゃ増すぜ!」とか(大型バイクだと低速でもモリモリだけど)、「VTEC最高!!!!」とか、ハーレーのような圧倒的ドコドコ感(振動ヤバすぎるけど楽しい)のような、そのエンジンのクセのようなものがグラディウスのエンジンではあまり感じられません。
性能としては素晴らしいのですが、バイクって趣味のバイクなので、どこか欠点やクセがあった方が逆に良いということもあるかもしれません。
私は、グラディウスはロングツーリング機として保有していますので、こうした純粋な性能の高さは嬉しいのですが(ツーリングでの疲労が少ない)、しかし、近くの街乗りとかでも楽しさを強く感じたい!という人には向かないと思います。
おわりに
というわけで、これだけ優等生なバイクなのに不人気車種の烙印を押されたままモデル終了となってしまった悲しきバイク、グラディウス400(650)の不人気理由の個人的な見解をまとめてみました。
こうしてみると、あと少しの「噛みあい」があれば、もっと売れていたであろう…と思うと、グラディウスオーナーとしては少し悲しく感じますが、逆にマイナー車が故に、グラディウスオーナーミーティングなどで多くのグラディウスが集まった時の喜びはひとしおですし、グラディウスオーナーの繋がりもメジャーバイクのそれとは異なる感じで、なんだか嬉しく思う時もあります。
ともあれ、グラディウス400自体は性能は素晴らしく、現在は中古価格もお求めやすいマシンになっていますから、コスパでマシンを選ぶ方には本当におススメの1台となっております!みなさん、グラディウス買いましょう!!!!
というところで今回は以上です!