今回は、フロントフォークからオイルが漏れてる…といった場合の正しい対処方と、暫定対処法について主にまとめてみました。
その前に前提として、フロントフォークの漏れってどんな状態なのか、放っておいてもいいかな…?などの疑問について回答する形で、そのあとに実際どんな対策をするかという流れになっています。
「正立フォーク」とか「倒立フォーク」って何…?
下記の記事に、「正立フォーク」と「倒立フォーク」について、どんなものかとメリット/デメリットについてまとめておりますので、ご覧ください。
とりあえず見た目上の違いだけを一言で書くと、「細い金属チューブが上側にある」フォークを「正立フォーク」と呼び、「細い金属チューブが下側にある」フォークを「倒立フォーク」と呼びます。
上記の記事の写真でいくと、左側のバイクは正立フォークで、右側のバイクは倒立フォークとなります。
フロントフォークからオイルが漏れるとはどんな状態か
どのような状態になっていたら、フォークからオイルが漏れていると分かるのかというと、下記のように、黒いオイルの線が出ていたらこれは漏れ判定ですね。
写真上部に黒い丸い輪っかができているのが分かると思います。これです。
この状態になると、自然治癒は決してしません。なにがしかの対処をしないと、多かれ少なかれオイルが漏れ続けます。
フロントフォークのオイル漏れを放っておくとどうなる?
フォークのオイル漏れは、放っておくとマジでやばいことになるので、前述の写真の通り、「ダークエンジェルリング(仮)」が出たら後述の対処をすることをオススメします。
フォークオイルの漏れを放っておくと、
- フォークオイルが漏れだし枯渇する
- 正常なダンピングができなくなるため操作性に影響する
- 漏れたフォークオイルが飛散する(特に倒立フォークの場合は注意!)
- 飛散したオイルがブレーキディスクに付着した場合、バイクが最悪停車できなくなってしまいます(ブレーキディスクとパッドの摩擦が下がるため)
というかなり致命的な事象を引き起こす可能性があります。とくに、2点目のケースは倒立フォークで起きがちで、これは本当に危ないです。事故に直結してしまいます。
なぜフロントフォークからオイルが漏れるのか
フロントフォークは、内部にオイル(ダンピング用の)が入っているのですが、そのオイルが外に出来るのを抑える役割を果たしているのが「オイルシール」です。
このオイルシールが何らかの理由によりダメージを負うと、内部のオイルが漏れ出てきてしまう、というわけです。
ではどうしてオイルシールが傷つけられるの?というと、大体は下記の2つの理由に帰結すると思います。
ダストシールの劣化によりゴミが入り込みオイルシールを傷つけた
ダストシールというのは、フロントフォークを外から見てぱっと分かる黒いゴム製のアレです。
あのダストシールが、経年劣化や飛散した砂やその他異物によるダメージを受けて劣化し、できた隙間から砂などが内部に入り込み、オイルシール(こっちがオイルを塞いでいる本体)を傷つけてしまう、というパターンですね。
極めてよくあるケースです。
フォークに発生した錆がオイルシールを傷つけた
ちゃんと洗車やメンテナンスをしていないと、フロントフォークに錆が発生してしまいます。特に雨の後の乗車でそのまま放置すると発生しやすくなってしまいます。
この錆が成長(?)して大きくなり、それとオイルシールが接触することでオイルシールが損傷し、隙間からオイルが漏れてしまうというケースです。
こちらは、フォークに錆が目立つバイクでは王道のオイル漏れの原因ですね。
「半年前とかにフォークオーバーホールをしてオイルシールを交換したんですが、またオイルが漏れてきます…」というケースでは、そもそも交換時にオイルシールを傷つけてしまったか、このようにフォークに錆があってオイルシールを攻撃してしまっている、という可能性が高いですね。
フロントフォークからオイルが漏れた時の正しい対処法-フォークO/H(オーバーホール)
さて、ここからは、じゃあフォークオイルが漏れてしまったんだが、どのようにすれば良いか、についてまとめていきます。
フロントフォークからオイルが漏れてしまったら…残念ながら、交換(オーバーホール)をするしかありません。
「なぜフロントフォークからオイルが漏れるのか」で書きましたが、内部のオイルシールがダメになっているため、どうしてもフォーク本体とオイルシールの隙間からオイルは漏れてきてしまいます。直すためには、部品交換が必要となります。
ただし、自分でできるメンテナンス一覧の記事の難易度を見て頂ければわかる通り、このメンテナンスは結構大変です。上級です。
というわけで、時間、場所、工具、それなりの整備経験が無い方は、バイクショップに任せるのが良いでしょう。逆に、上記4つが揃っているのであれば、自分でオーバーホールをするのもアリですね。
私はいつも自分でオーバーホールを行っていますが、ちゃんとした工具と場所があれば、手順に沿ってやれば個人でも全然可能です。
バイクショップにオーバーホールを任せる
バイクメンテナンスの腕に自信の無い方や時間の無い方などは、もうショップに任せてしまいましょう。確実ですからね!
もちろん、消耗品の交換部品代以外にも工賃が発生してしまい、結構割高にはなってしまいますが…
下記は、ショップに任せた場合にかかる料金の一例として掲載します。
「2りんかん」でのオーバーホール代金
こちらの公式ページを参考にすると、料金は下記のようです。(下記価格は2019年4月時点)
- 正立フォーク(税込み工賃)
- 15,660円
- 倒立フォーク(税込み工賃)
- 18,900円
ただし、公式ページの説明にもありますが、
どちらの作業もフォークオイル・シール、ガスケット類は別途必要となります。車種によってタンク脱着やカウル脱着が必要な場合、別途追加料金が発生する場合があります。
出典:2りんかん公式
とのことですので、さらにプラスで1万円程度(消耗部品代で)かかるものだと思っておいた方が良いでしょう。
「ナップス」でのオーバーホール代金
こちらの公式ページを参考にすると、料金は下記のようです。(下記価格は2019年4月時点)
- 正立フォーク
- 工賃 21,600円から(カウル脱着等、別途工賃がかかる場合がございます。)
- 倒立フォーク
- 工賃 26,000円から(カウル脱着等、別途工賃がかかる場合がございます。)
とのこと。こちらは…2りんかんの料金と比べると結構高く見えますね。もしかしたら、一部消耗部品の料金が込みなんですかね…?すみません、ここは不明ですので、事前に確認することをオススメします。
ともあれ、それなりにコストがかかるということですね。
自分でオーバーホールする
さて、ショップに任せるのはとても楽なんですが…やはりコスト面で気になってしまいますよね。工賃だけでそれなりの金額がかかってしまいます。
もちろん、フォークは自分自身でメンテナンス可能ですので、選択肢としては大アリです!
フォークは、前述の「正立フォーク」と「倒立フォーク」の2種類が存在しますが、それぞれで微妙にメンテナンス方法と難易度が異なります。残念ながら…倒立フォークの方が若干手間です…ので、倒立フォークのバイクをお持ちの方は、しっかりイメトレしてからできるかどうかを見極めるのが良いですね。(正立フォークが簡単とはいってない)
正立フォークの場合
私は過去4回程、フロントフォークのO/H(オーバーホール)を経験しています。そのうち、運よく2回(GN125HとVTR250)はブログの記事としてまとめてありますので、参考にしてください。
正立フォークのオーバーホール手順(概説)
具体的なオーバーホール手順は、上記2記事を参照頂きたいですが、イメージをもっていただくため、だいたいどんな内容のメンテナンスをするのか、書いていきます。
- フロントフォークを取り外す
- タイヤ、フェンダーその他周辺部品も取り外す
- トップキャップを緩める
- フォークを取り外す
- フロントフォークを分解する
- フォークソケットボルトを緩める(難関!固い!)★1
- インパクトレンチなどがあると楽です。ない場合は、頑張ってソケットボルトを緩めます。
- フォークオイルを抜く
- フォークソケットボルトを外す
- ダストシール、オイルシールを外す
- フォークソケットボルトを緩める(難関!固い!)★1
- フロントフォークを組み立てる
- オイルシールを打ち込む(専用工具(or自作工具)必要!)★2
- シールプッシャー又は代わりになる工具が必要です
- フロントフォークを組み立てる
- オイルシールを打ち込む(専用工具(or自作工具)必要!)★2
- フォークオイルを入れる
- フォークオイルを入れ、油面調整する(専用工具(or自作工具)必要!)★3
- 油面調整ツールが必要です
- フォークオイルを入れ、油面調整する(専用工具(or自作工具)必要!)★3
- フロントフォークを車体に組み付ける
という感じです。★の部分は、ちょっと特殊な工具を使うことになるため、事前の購入or準備が必要です。
専用工具or自作工具について解説-★1-インパクトレンチ
フォークソケットボルトを緩めるのに、インパクトレンチがあるととても楽です!これが無いとかなりの高トルクで締め付けられたボルトを手で外さないといけなくて、結構大変です。
私はインパクトレンチを持っていないのでいつも手作業していますが、大変です。
以下のmakitaのものが、お値段的にはお手頃ですが信頼性は高く、スペックとしてはフォークソケットボルトを外すためのパワーは十分あります。Amazonでもベストセラーとなっていました。
専用工具or自作工具について解説-★2-シールプッシャー
フォークオイルを封入するためのフォークオイルシールですが、これは通常は圧入作業が必要になります。
そのために、「シールプッシャー」という専用工具を使うことになります。
この工具は、円形の重りのような工具で、フォークを挟むようにセッティングし、オイルシールを下側に設置し、ひたすら叩くというめっちゃアナログな工具です。
原理が分かれば代用工具を思いつくことは容易いと思います。はい。大体みなさん、塩ビ管を使用してシールの打ち込みをされていますね。私も大体いつもサイズの合った塩ビ管をホームセンターで購入し、それを用いて打ち込みしています。下記記事がまさにそれですね。
専用工具or自作工具について解説-★3-油面調整レベルゲージ★3
フロントフォークにオイルを入れる際は、オイルがどの程度入っているかを油面の高さで見ます。この時に、じゃあどうやって油面を見るかというと(フォークは透明な筒ではないので外から見えない)、この油面調整用のレベルゲージを使用します。下記のような商品ですね。
原理はやはり簡単で、油面何mmの高さで棒をセットし、シリンジでオイルを吸えば自動的に油面調整されるというものです。(油面の高さは車種によって違います。サービスマニュアルなどで情報を確認してから調整してください)
油面調整ツールも、自作することは可能ですので、購入せずに自分で作成してもOKです。私は購入しました。
倒立フォークの場合
実は私、倒立フォークのバイクを保有したことがないので倒立フォークオーバーホールは未経験です…
実際に自分でやられている方で、すごく分かりやすいページがありました。こちらの方のブログです。VTR1000SPのフォークオーバーホールをされているようです。
手順の概要ですが、正立フォークの2と3の手順が若干異なり、フォークを分解する際にコンプレッサーでスプリングを押し下げていくという手順が必要になるようです。
この際に、専用工具又は自作工具が必要になります。
この工程が若干倒立フォークの難易度をあげていると思われます。
フロントフォークからオイルが漏れた時の暫定対処法(応急処置)
フォークをオーバーホールせずとも、一時的にオイル漏れを緩和する方法があるようです。それが下記のものですね。
ただし、あくまでも暫定対処です。またいつかオイルシールから漏れが発生してきますので、いつかはオーバーホールが必要になります。
ペーパー擦り法
所謂紙やすり、耐水ペーパーをフォークとオイルシールの隙間に差し込み、オイルシール側の接地面を若干削って…ということをするとオイル漏れが一時的に軽減されるようです。
こちらの方の記事がとても分かりやすかったです。
ただ、ペーパーを何周かさせる際に、タイヤやフェンダーなどの邪魔なものを外す必要がありますが、ここまでやるならもうオーバーホールした方が早いんじゃないかという気もしなくもないですね。
ペーパー擦り法の手順
一応、ペーパー擦り法の手順を示しておきます。
- 耐水ペーパーの600, 800番くらいを用意し、10cmx15cm程度にカット、角を丸くする
- 人によっては400番や1000番を用意する人も。
- タイヤやフェンダーを取り外す
- ダストシールを外す(上に引き抜くだけでOK)
- 耐水ペーパーの磨き面をフォークと反対側(フォーク側にはツルツルな面がくるように)に巻き付けて、オイルシールとフォークの隙間に入れ込む
- 無理に入れないように注意!
- この耐水ペーパーが挟まっている状態で3~5週まわす
- 後は元通りになおす
という感じです。これでオイルシール面を若干均すして、オイルを防ぐような効果を期待するというものですね。
これでも治らなかった場合は、素直にオーバーホールしましょう。
おわりに
今回は、フロントフォークからオイルが漏れてきた際の対処法、暫定対処法、そもそもどうしてフォークからオイルが漏れるの…?などのフロントフォークオイル漏れまわりの話についてまとめました。
一般的には、新車で購入して3万キロ程度は特に問題なく乗れますが、そのあとやはりジワジワとフォークオイル漏れが出てきたりします。
頻繁に交換が必要な部分ではないですが、ずっと放置することはできませんので、オイルが漏れてきたらしっかり対処して健全な状態を保ちたいところですね!
今回は以上です!