はじめに
今回は、バイクのフロントタイヤを支持するフロントフォークの2つの種別、正立フォークと倒立フォークについてまとめます。
何れも、路面の凹凸による衝撃を吸収するという役割(ざっくり)は同じですが、その種別によって性質が結構変わってきます。
特に最近は、250ccクラスのCBR250RRやYZF-R25(2019~)が倒立フォークを採用したことでかなり話題になっていますが、それってそんなにすごいことなの?どんなメリットがあるの?といった疑問があるかと思います。
今回はそれらにお答えしていこうと思います!
正立フォークとは
正立フォークとは、フロントタイヤを支えるフロントフォークの上側が細いパイプ(インナーチューブ)、下側が太いパイプ(アウターチューブ)となっているフォークです。
概ねですが、400ccクラス以下のバイクはこの正立フォークですね。中型クラスに限らず、一般的なロードスポーツのようなバイクではこのタイプが採用されています。
正立フォークの例(グラディウス400)
倒立フォークとは
倒立フォークとは、正立フォークと丁度逆で、上側が太く、下側が細いという見た目になっているフォークです。
スーパースポーツなど、スポーツ性能が要求されるバイクでは殆どこの形式(倒立フォーク)が採用されます。スーパースポーツだけではなく、ストリートファイターやその他運動性能が高いといわれるようなバイクは大体この倒立フォークですね。
例えば、下記のような車種に採用されています。ザ・スポーツバイクなマシンには必ず採用されていますね。
- HONDA
- CBR1000RR
- CBR250RR
- YAMAHA
- YZF-R1
- YZF-R25(2019~)
- SUZUKI
- GSX-R1000
- KAWASAKI
- Ninja ZX-10R
もちろん上記以外にもたくさんのスポーツバイクが採用していますが、そうそうたるマシンたちに採用されているフォーク形態となっております。
倒立フォークの例(CBR1000RR(HOND公式ページより))
正立フォーク/倒立フォークそれぞれのメリット/デメリット
それでは、正立フォークと倒立フォークの特徴とメリットとデメリットについてまとめていきます。
正立フォークのメリット/デメリット
正立フォークのメリット
価格が安価
倒立フォークと比べて部品点数や製造工程が少ないため安価となります。
なので排気量が低めのバイクには正立フォークが多く採用されていますね。
オーバーホール費用が安い
倒立フォークと比べると、O/H費用が安いです。
例えば、2りんかんの整備価格を見ると、正立フォークだと15660円、倒立フォークだと18900円ということで、3000円ちょっと正立の場合と比べて高く設定されています。
確かに、倒立フォークの分解手順を見てみると、コンプレッサーを用いてスプリングを圧縮させる必要があったりと、正立フォークよりも若干複雑というか手間が発生してしまうため、オーバーホールは正立の方が費用が安くなるのもうなずけます。
事故時にフレームまでダメージが届きにくい
メリットとしてカウントするべきか迷いますが…
フォークがしなりやすいため、事故時などはフォークが衝撃吸収の役をかってくれることが多いです。
よって、フレームまでダメージが加わることが少なくなります。(事故の規模によりますけど)
正立フォークのデメリット
剛性が低い(倒立フォークと比べて)
フォークがクランプされている部分のフォーク径が倒立のものと比べて細いですから、剛性が低いです。ハードブレーキング時などでは、車体が負けてしなっている感じが気になったり…やはり剛性がの点では正立フォークに劣りますね。
バネ下荷重が多い(倒立フォークと比べて)
後述しますが、思いアウターチューブが下側に来ますので、バネ下荷重が多くなってしまいます。
倒立フォークのメリット/デメリット
倒立フォークのメリット
見た目がレーシーでかっこいい!
好みといえば好みでしょうが、あのチラリと見える金色の図太いサスペンションから感じる圧倒的高級感!私は好きです。ネットの声を漁ってみても、やはり倒立フォークは見た目が良いよね!という声をよく見ます。
もちろん普通に倒立フォークというだけでかなりカッコイイんですが…こちらをご覧ください。
出典:スズキ公式
スズキのGSX-R1000なんですが、SHOWAのBFF&BFRC装備のフロントフォークとなっております!これがリアサスのサブタンクみたいな感じでさらにカッコよさに磨きがかかっていますよ!!惚れ惚れします…
剛性が高い
最も負荷がかかるステムとの接合部分のパイプ太さが、正立フォークの場合と比べてかなり太く、剛性が高くなります。ハードブレーキング時などもフォークが負けて曲がってしまう、ということも正立フォークと比べるとかなり少なくなります。
バネ下荷重の減少によリアサス走行性能UP
バネ下荷重とは、サスペンションにおいてバネ部よりも下に位置するパーツの重さのことです。
バネ下1kgの重量低下は、車体全体で見るとその数倍の軽量化効果があるようです。正立フォークと比べるとこの点かなり有利ですね。
ちなみに、バネ下荷重(重量)については車のHPですが、こちらのサイトがとても参考になります。
低フリクション
正立フォークと比べて低フリクション(作動が軽い)です。
倒立フォークの方が間合長を長くとることができて…うんぬんらしいですが、詳しくはこちらのページに書かれていますので、興味のある方はご覧下さい。
倒立フォークのデメリット
価格が高価
正立フォークと比べ、部品点数増/製造工程増により高価になります。
オーバーホール費用が高い/オーバーホールの手間が正立よりもちょっと多い
1つ目と同じような理由で、O/H費用も高くつきます。
実際、こちらにも書いていますが大手バイクショップではそれなりに価格差が生じています。
インナーチューブが路面からの飛び石や、前走行車両からの巻き上げの影響を受け易い
インナーチューブが路面に近いため仕方が無いですね…路面からの石、砂などの巻き上げによりインナーチューブがダメージを受けやすいです。こちらにも書きましたが、インナーチューブがダメージを受けると、接触面であるオイルシール(オイルを封入する部品)もダメージを受けてしまい、フォークオイル漏れに繋がる可能性が正立フォークに比べて高まります。
このダメージを減らすために、ガードが付いている場合もあります。
オイル漏れするとかなり危険
前項で若干触れましたが、正立フォークの丁度逆のように取り付けられているため、シールが駄目になってオイルが漏れてきた際にそのまま下方向に流れ出してきます。
これがブレーキディスクなんかについたら…マジでやばいです。程度にもよりますが、ブレーキ性能の低下、ひどい場合ではブレーキが利かなくなるということもありえます。
流石にそんな状態になる前に気づくとは思いますが、ネットの情報を見ていてもブレーキフィールが悪くなったとか制動力が落ちたなどのコメントは見ます。
事故時にフレームがダメージを受け易い
メリット側で記述されていますが、フォークの剛性が高いためフォークが曲がって衝撃吸収があまりされません。
よって、その先のフレームにダメージが加わり易いです。
おわりに
やはり、スポーツ走行という点においては、倒立フォークに軍配があがりますね。圧倒的です。見た目も走行性も。
しかし、メンテナンスを自分でしたい派の私としては、正立フォークの方が楽ですので(とはいえ倒立のO/Hしてないので比較できないですが)、その点は個人的には結構好印象だったりします。
というところで、今回は以上です!
ちなみに、フォークオイルが漏れてきて困っているよ…という方は、こちらのページも参考にしてみてください。フォークオイル漏れの原因や、どのように対処するかについてまとまっています。