はじめに
今回は、バイクのエンジンに燃料(混合気)を供給する2種類の装置であるキャブレター(キャブ)とFI(フューエルインジェクション)についてまとめました。
それぞれがどういう機能なのか、等はネットでもぼちぼち見るんですが、明確にメリット/デメリットがまとまったページがなかったので、記事化してみました。
ちなみに、このページでは、キャブレターのことを「キャブ」と、フューエルインジェクションのことを「FI」と呼称していきます。
「キャブ」や「FI」は燃料(混合気)を作る装置です
バイクや車のエンジンに燃料を供給する装置のことです。
エンジンを動かすためのガソリン(混合気)をエンジンに供給するという点ではどちらも同じですが、その供給方法に違いがあります。
ちなみに、この部品は一般的にバイクのエンジンのすぐ後方あたりに装着されています。
例えば、GN125というバイクは、すぐ右手に見えるエンジンと繋がっている下記写真中央の部品です。(赤丸がついていますが、すみません気にしないでください)
VTR250では、一見分かりにくいですが、タンクの真下に装着されており、下記のような見た目になっています。
VTR250はV型2気筒のエンジンですので、キャブレターも2つ組み合わさっています。
4気筒であれば、これがさらに4個合体しています。
キャブ(キャブレター)とは
ガソリン(混合気)が、吸い込まれる形で供給されます。
エンジン内でピストンが上下に動いていますが、このピストンが爆発で押し下げられる時に、負圧が発生し、その力でエンジン内にガソリン(混合気)が供給されます。
今までめっちゃ圧縮されていた部屋がいきなり膨張したら、それは空気が流れ込んで来ますよね。
密閉されている部屋があって、その部屋の扉をいきなり開くと、空気を呼び込むことができるイメージです。これでエンジンの中に燃料を取り込むという感じです。
上記のように、かなりアナログな供給方式です。供給というか、吸われているだけですね。ですので、後述しますが繊細な燃料コントロールが難しいです。
排ガス規制により排ガスの条件が厳しくなったため、キャブレター方式ではこの要件を満たせなくなりました。よって、今市販されている新車のバイクでは殆どキャブレター方式のものはなく、次の項のFI(フューエルインジェクション)方式となります。
FI(フューエルインジェクション)とは
ガソリン(混合器)を、噴出する形で供給します。
車体に取り付けられた各種センサから、今エンジンにこの位の燃料を供給してあげるとベストだな、というのをコンピュータが計算してエンジンにガソリン(混合気)を噴出します。
上記のように、電気的な供給方式です。
前述のキャブレター式では繊細なガソリン量(混合気の割合)の調整ができませんでしたが、こちらのFI方式ではコンピュータのセッティングによって繊細な排ガスコントロールができます。
初心者にオススメなのは「キャブ」か「FI」か?
間違いなく「FI(フューエルインジェクション)」です!
下記のメリット/デメリットでも書きますが、始動性が良く、バイクが不調になりにくい点が評価ポイントです。
あえて初心者の方がキャブを選ぶ理由は、下記のケースだけかと。
- 価格
- FIの方が若干高価です
- キャブ車は、古い機体が多く、そもそも安めですから。FIは、バイクの世界では比較的新しい機体にしかついていないので値段は高めになってしまいます
- 欲しいバイクがキャブ車しか存在しない
- 絶版車では仕方がないですよね
- バイクの構造を学びたい/メンテナンスは全部自分でやりたい!
- キャブは分解できますし、こんな構造になっているんだ!というのが分かり易いです
「キャブ」と「FI」のメリット/デメリット
キャブ(キャブレター)のメリット/デメリット
メリット
- 構造がシンプル!
- 仕組みが分かり易く、バイクの構造の勉強になります
- 故障時、構成部品の1部分のみの交換ができる
- 押しがけでエンジンがかかり易い(※ FIの方の押しがけ項目をご覧下さい)
メリットは、構造が簡単で電気的なモノが絡まないので色々とシンプルで、自分の整備の範疇におさめられる、というところです。
実際にキャブレターを分解整備した時の様子が下記の記事にまとまっています。
デメリット
- 気候による影響を受け、不調になり易い
- 標高の高い所や、寒い所に行くと、停車後にエンジンがかかり辛くなったり…ということに陥りがちです。平地でもエンジンのかかりが良くないバイクだと大変です。
- FIと比べると始動性が悪い
- FIと比べると燃費がよくない/環境によくない
- 前述の通り、アナログにして大ざっぱな燃料供給方式です。FIよりも最適な混合気は作れません…
- FIと比べると、最適なセッティングを探しにくい
- キャブのジェット類を、これかな、これかな、と交換してセッティングを出すのも楽しくはあるのですが…機体によってはキャブを開くのが容易でないものもありますし…
FI(フューエルインジェクション)のメリット/デメリット
メリット
- 気候による影響がほぼ無い
- 車体各部に取り付けられたセンサの情報を基に混合気の濃度を決定するので、標高が変わろうが、気温が変わろうがへっちゃらです
- キャブと比べると始動性が良い
- 始動直後でも、最適な混合気を作り出してくれますので
- キャブと比べると燃費がいい/環境にいい
- ちょっと薄めにして、最適な混合気を作りますので、燃費も良く、環境に良い(キャブと比べて)です
- 最適なセッティングを探しやすい(要インジェクションコントローラー)
- インジェクションコントローラーという、セッティング用の機械があるのですが、これを使用すると簡単に様々なパラメータのセッティングが行えます。初心者には敷居が高すぎますが、慣れた人からするととても簡単で楽だそうです。
デメリット
- 構造が複雑
- 電子制御されていますし…車体に各種センサが取り付けられており、配線も複雑です
- 故障時、FIユニット一式の交換になりがち⇒お金がかかる
- キャブと異なり、FIは一つのFIユニットAssyとして部品が出来上がっています。ですので、壊れたのが小さな1箇所だったとしても、全体交換になるケースが多い、というか殆ど全体交換になると思います
- 押しがけでエンジンがかかりにくい/かからない/するべきではない?
- 詳しくは、下記のリンク先記事をご覧ください
- バッテリーが弱くなった場合に、エンジンがかからない可能性が(キャブと比べて)高い
- 燃料ポンプや、その他エンジン始動までに動いてくれないといけない部品に電力が供給されないと、エンジンはかかりません…キャブよりも電力が必要な部品が多いからですね
おわりに
今回は、バイクの「キャブ」や「FI」って何?メリット/デメリットは?という内容についてまとめました。
色々とキャブについても書いてきましたが…とはいえ、これからキャブ車は無くなっていきますので、選択肢はどんどんFIに傾いていきます。
私は、キャブ車が好きです。
メンテナンスとか、自分でやってるぞ感があって好きです。
ただ、ツーリングに行くと、「ああ、FIで良かった…」と思うこともあり…(一緒にツーリングに行った友人が、高山でエンジンがかからなくなったり、冬の朝一の始動にすごい苦労していたりというのを見ると思います)
私の中の住み分けとしては、趣味バイクはキャブ車!ツーリングバイクはFI!としています。
というところで、今回は以上です!