はじめに
今回は、自作(再作成)予定中のGN125のシートフレーム(サブフレーム)の強度計算をちゃんと考えてみようというぜ!という記事です。
何故GN125のシートフレームを再作成するのか、については別記事で後述します。
強度計算と書いていますが、何のことはない単純支持梁のたわみ計算をしてみただけです。
だけですが、例えば今回のようにシートフレームを作成し、そこに自分の好きなシートを載せたいような場合では、強度(たわみ量)の概算くらいには使えます。
タイトルは強度計算と銘打っていますが、たわみ量の計算です(たわみ量が小さい=強度的に問題無し)。
あと!ここ重要です。
私は専門家でも何でもありません。間違いがあるかもしれません。そしたらすみません。
今回の強度(たわみ)計算対象
さて。今回呼称している「シートフレーム」ですが、下記の画像のようなものを想定しています。(超シンプル)
このフレーム(作成前の状態ですが)は何が目的なのかというと、GN125というバイクの湾曲したリアフレームを平坦にし、例えばSR400などのフラット形状なシートを装着できるようにするためのものです。
タンク下からリアフレームの盛り上がり部分までを左右1本ずつの棒(梁)をわたすことでフラット風なフレームにしてやろうということです。完成形としては、下記のような感じを想定しています。わおカッコいい!
この時、この棒を単純梁とみなすことで(※)、ライダーがシートに跨った時にシートフレームにかかる荷重によりシートフレームが耐えられるか、というのを計算して、シートフレーム素材の選定の参考にしようじゃないか、というのか今回の記事です。
※1・・・実際は、これが単純梁なのか両端固定梁なのかは私にはわかりません…(判定のための公式もあるんですけどね)
ただ、両端固定の方が一般的に強度が出るようなので、単純梁で計算しておけば安全的に問題なさそう、ということで計算が簡単な単純梁としています。
計算のための事前知識
たわみ量計算の公式
それでは本題の、たわみ量計算を行っていきます。今回は、等分布荷重となった場合と仮定します。
単純梁等分布荷重のたわみ量計算の公式は下記の通りです。
$$δ=\frac{5wl^{4}}{384EI}$$
(集中荷重の場合は$$δ=\frac{Pl^{3} }{48EI}$$)
δがたわみ量です。ちゃんとした建造物の場合は、このたわみ量は梁全長の長さの1/1000となるように設計する、のような記述を見かけた気がします(ソース調査します)。
wは、長さ当たりの荷重です。単位は[N/mm]とかになります。
集中加重の場合のPは、単に荷重で単位は[N]です。
lは梁の長さで、一般的にはmmかmが用いられます。今回はバイクのシートフレーム程度の長さですので全体的にmmを用います。
Eはヤング率(弾性係数)で、使用する素材によって値が決まっています。
Iは断面2次モーメントで、使用するフレームの断面形状によって値が決まります。
この公式を見ると、
荷重が大きくなるか、梁の長さが長くなる(ここ3乗!)とたわみ量は大きくなり、
ヤング率が大きくなる(素材を強度の高いものにする)か、断面2次モーメントを大きくする(曲がりにくい断面にする)とたわみ量は小さくなる、ということが分かります。
最も強度を上げるのに良いのは…梁の長さを短くすることですが、これはバイクの元々のフレーム形状的に決まってきてしまうものなので大きく短くすることは難しいでしょう。
他に、かかる荷重をそもそも減らす(減量するとか)というのもアリですが、まぁ、頑張った割に大した見返りはないでしょう。
とういことで、フレームに使用する素材の選定と、素材の断面形状に注目して最適なフレームを設計しましょう、という話になってきます。
ヤング率(E)と断面2次モーメント(I)について
前項で、梁の曲がりにくさは、荷重、梁の長さ、材質(ヤング率)、断面形状(断面2次モーメント)によって決まると書きました。
一応、それが何か分からなくても公式に当てはめれば結果は出てしまいますが、一応大雑把に何者か説明します。
ヤング率とは
ヤング率(ヤングりつ、英語: Young’s modulus)は、フックの法則が成立する弾性範囲における、同軸方向のひずみと応力の比例定数である
です。(Wikipediaより)
意味不明です。
簡単に言うと、材料の変形しにくさを表した値で、この値が大きい程変形しにくいと言えます。馴染みのある単語に当てはめるなら、剛性、って感じですね。
断面2次モーメントとは
断面2次モーメントとは、曲げに対する梁部材の曲がりにくさを表す数値で、断面形状によって決まります。
(追記予定)
実際に今回用意したフレーム素材で強度を計算してみる
完全に順序が逆なのですが、見切り発進して既にフレーム素材を購入しています。強度計算する前に、です。(これで、どうしてこの記事が書かれたか察しの良い方は気づきましたよね。ええ)
前提
購入したのは、アルミ(何かの合金)で厚み9mm, 幅20mmという素材です。
今までの経験上、鉄と比べると弱いにせよアルミで厚さ9mmというと結構強かったので、このくらいでいいんじゃない?ととりあえず購入してみました。
次に梁の長さですが、今回の私の目的である「GN125のシートサポートフレーム作成」においては、フレームの長さは大体300mmとなっています。
次に、かかる荷重の想定ですが、大体100kg位の荷重がかかる想定として、N換算で980Nとしてみました。
(1kgで9.8Nなんで)
100kgは何処からきたのかというと、
- 2人乗りした場合、同乗者の重さはもとからあるフレーム(超強度)にかかるためサブフレームとしては計算考慮外に
- 主な搭乗者を成人男性の60kgと想定して、段差等を乗り越えた時の荷重を考えてもとりあえず100kg想定にしておけば大丈夫なんじゃなかろうか
というマジで大雑把な想定によります。
現実、シートに自分の全体重をかけて乗る人なんていないでしょうし(半分位はステップやハンドルにいってるはず)、100kgで計算しておけば大丈夫、だと思っています。はい。
真面目にやりたい人は、2人乗り時の重量と、最大Xmm(自分で決める)の段差をから落下した場合にかかる荷重なんかを計算して荷重を決定してください。
ヤング率を求める
さて、次に必要なパラメータとしてヤング率を求めます。
求めるというか、ここは定数ですので自身の素材に合ったヤング率をネットから探してもってくるだけですが。
今回購入した素材は、アルミ(何かの)合金ですので、そのヤング率をWikipediaから拝借してきます。
Wikipediaによると、アルミのヤング率は69~76とのことで、何との合金かによって変わるらしいです。
今回は不明ですので、平均の72.5とすることにしました。
単位に注意
情けない話なんですが、ここでハマりました。
Wikipediaに掲載されているアルミ合金のヤング率は(平均値を採用するとして)72.5、なんですが、単位がGPaになっています。
GPaはギガパスカルですね。
72.5GPa = 72.5 * 10^9Paです。
また、今回は全体的にmmで統一して計算することにしているため、1平方メートル当たりの力を意味するPaの単位ではNGで、mm^2当たりに換算する必要があります(1Pa=1N/m)。
というわけで、今回のケースでは、72.5*10^9[N/m^2]=72.5*10^3[N/mm^2] =72500N/mm^2をEの値として使用します。
断面2次モーメントを求める
断面2次モーメントは、その名の通り断面の形状により異なります。
断面の形状というのは、正方形,長方形,円, 丸パイプ, 角パイプなどですね。
今回は、長方形のアルミを購入したので、下記の公式にて求められます。(他の断面形状の場合は、こちらのページなどで公式を見て求めて下さい)
$$I=\frac{w*h^3}{12}$$
wは断面で見た時の横幅、hは高さ(厚み)で、今回はmmで統一しているので断面2次モーメントは、20*9^3/12 = 1215[mm^4] となります。
たわみ量を求める
長くなりましたが、最初のたわみ量の公式を用いて、この部材(×2)を使用した時のたわみ量を求めてみます。
2本のアルミ角棒を使用しますので、負荷がそれぞれに均一でかかったとし、片方ずつに490Nの負荷がかかったものとして計算します。
等分布荷重とした場合
δ=(5*(490/300)*300^4)/(384*72500*1215)
δ=66150000000/33825600000
δ=1.955619412515964[mm]
となります。
2mmのたわみは…微妙なところですね。
甘めに等分布の想定で考えて2mmです。現実は、うまく等分布にはならないと思いますから。
集中荷重とした場合
計算仮定は省略しますが、たわみは下記の通りです。
δ=3.12899106[mm]
3mm…もたわむんですね…これはやばそう。
おわりに
というわけで、すごく長くなりましたが、厚さ9mmのアルミ棒2本で、人間の重さを支えるフレームの役を担わせるのは力不足っぽいと判断したため、結局センター部分により強固(厚さ15mm)の棒を通すことに決めましたとさ。
バイク乗りの皆さん、シートフレームを自作される際は、一旦強度計算をしてから材料を買うと損しなくて済みますよ!という話でした。
今回は以上です!