三気筒エンジンとは
文字通り、エンジンのシリンダーが3個ある形式です。
車の世界では、コンパクトカー(軽自動車や普通自動車の小排気量車)にはかなりよく採用されるメジャーで馴染みのあるエンジン形式なのですが、バイクの世界ではかなり稀なエンジンとなっております。
シリンダー配置の方式によって、直列三気筒やV型三気筒などの分類がされます。
三気筒エンジンを採用したバイクの例
三気筒のバイクは、後述のMT-09の登場で一気に地位を確立した感はありますが、とはいえそれ以外のマシンでは殆ど聞かないですよね…
というわけで、現在実際に三気筒エンジンが使用されている車種にはどんなものがあるかを、一例を書いてみます。
YAMAHA MT-09/XSR900
こちらは、三気筒バイクの良さを世に知らしめた歴史的バイク、MT-09です。
MT-09
出典:YAMAHA公式
最近マイナーチェンジによりフロントマスクがすごいことになりましたね。賛否あると思いますが、個人的にはかなり好きです。
下記は、エンジンを同じくする別概観のレトロなXSR900です。
XSR900
出典:YAMAHA公式
こうした同じプラットフォームで別概観というシステム、すごく良いと思います。
DAYTONA(デイトナ)675
出典:Triumph公式
デイトナの持つミドルクラスSSのデイトナ675も三気筒です。
デイトナ675は聞いたことがある方ならわかると思いますが、かなり独特なエンジンサウンドで、個人的にはすごいカッコイイと思ってます…
####DAYTONA
MV AGUSTA(アグスタ) F3
出典:MV AGUSTA 公式
完全にDAYTONA675を食いにいっているマシン。MV AGUSTAのF3です。エンジンはDAYTONA675と同じ並列三気筒です。
私には買えるタイプのバイクではないのでアレですが、見た目はF4譲りで凄いカッコイイですね。
三気筒エンジンのメリット/デメリット
三気筒エンジンのメリット
(四気筒バイクと比べて)エンジンをコンパクトにできる
四気筒バイクと比べて、三気筒バイクの方がエンジンをコンパクトにできるというのが大きなメリットですね。
コンパクトというのは、全体の重量についてももちろんですが、左右のエンジンの幅という点も含めています。また、エンジンの部品点数も少なくなるためコストダウンや信頼性UPという点で良いですね。
何故コンパクトになるかというと、シリンダー(爆発(燃焼)が起きる部屋)が1つ少なくなるからですね。シンプルな話です。
YAMAHAのMT-09の開発ストーリーのページにも記述されていますが、この四気筒と比べてコンパクトさを得られる(がエンジンのフィーリングは二気筒よりも良い(パワー感など))という点が、MT-09に三気筒を積んだ理由として挙げられています。
よく「三気筒は中途半端」などと言われますが、よく言えばバランスが取れているということですね。
マスの集中化に貢献
前項とちょっと被っていますが…
前述の通り、四気筒バイクのエンジンと比べて、三気筒バイクの方がエンジンがコンパクトになります。
ということは、その分重量が重いモノを1カ所に寄せることができるため、マスの集中化という点でメリットがあります。
(四気筒バイクと比べて)トルク感が高い
トルク感は、エンジンの気筒数が少ない程高くなります。よって、四気筒バイクよりも三気筒バイクの方がトルクは高いです。
(四気筒バイクと比べて)トルクに比して燃費が良い
前項と似ていますが、同程度の排気量のバイクであれば、四気筒エンジンよりも三気筒エンジンの方が高トルクかつ低燃費のエンジンを得ることができます。
同一総排気量の直列4気筒エンジンと比較すると、1気筒当たりの排気量が大きく、冷却・摩擦損失等が小さいため高トルク・低燃費が得られる
出典:Wikipedia
もちろん、最高出力はトルクx回転数なので、より回転がスムーズに上昇する&最高回転数が高い四気筒の方が得られる馬力は高くなりますが、トルクと燃費という視点で見ると四気筒よりも三気筒の方が有利となっています。
(二気筒バイクと比べて)アクセルレスポンス性が高い/得られる最高出力が高い
同一排気量のエンジンであれば、二気筒エンジンより三気筒エンジンの方がエンジンの吹け上がりが良いです。
これは、同じ排気量であれば、1気筒あたりのエンジンのピストンサイズの重量が下げられるため、慣性による影響を受けにくく、エンジンの回転が上がりやすくなるためです。
同じ理由で、得られる最高出力も高くなります。
エンジン流用性が良い(車のケース)
こちらは四輪車の世界の話で、バイクの世界にはあまり関係が無いですが一応。
四輪車の場合は、四気筒エンジンの車がとても多くラインナップされていますが、その四輪車のエンジン設計からそう大きく変えずに三気筒エンジンへのダウンサイジングができる、というエンジン設計の流用性の高さが四輪車の世界ではメリットとされています。
参考:ベストカー
三気筒エンジンのデメリット
偶力振動の発生
偶力振動とは、バイク全体をゆり動かすような振動のことです。
完全バランスの直列6気筒エンジンとは異なり、対称の位置で同方向に動くピストンがないため、両端のシリンダー内を上下する往復運動系がエンジンをすりこぎ運動のように揺らすことになる(偶力振動)
出典:Wikipedia
例えば、4気筒や6気筒であれば、とあるピストンが動いている時に、それを打ち消しあう方向のピストン運動方向があるため、丁度振動というか回転する力は発生しませんが、三気筒のような奇数エンジンの場合は、バイク全体を回転させてしまうようなパワーが発生します。
まあこれはバイクの場合は味と言ってしまえばそれまでですが。四輪車のような居住性がより重視されるようなケースではこれはかねてから大きなデメリットとされていました。
近年では、エンジンマウントの精緻化、アイドリングストップ機構により停車時はエンジンオフすることでドライバーにそれを気づかせないなどの工夫がされているおかげで、コンパクトカーの中では三気筒エンジンが一般化していますが大きな問題にはなっていないようです。
「それ四気筒で良くね?」「それ二気筒で良くね?」問題
メリットの方で、「四気筒と比べて」や、「二気筒と比べて」などの記述が多くありました。
そうです。ちょっとやはり中途半端感はあるんですよね。
最高出力であれば、同じ排気量であれば四気筒エンジンの方が有利です。
低速トルクや燃費であれば二気筒エンジンの方が有利です(もちろん単気筒の方がより有利ですが、スポーツバイクに搭載することを意識するのであればデメリットが目立つのであえて二気筒と比べています)
というわけで、どっちつかずのキャラクターにはなってしまいます。
が、メリットの一番最初の項目でも書いた通り、逆にどっちの良さもバランスよくとれるという面もありますので、まあ中途半端は必ずしもデメリットではないですね。はい。
実際、このバランスという面がキャラクターにあっているということで、2016年以降大ヒットバイクとなったMT-09に採用されているわけですし!
おわりに
今回は、エンジンの気筒数として採用されることが少ない三気筒というエンジン形式について、その採用されている主なバイクとメリット/デメリットについてまとめてみました。
世間では全然三気筒エンジンが採用されていませんでしたので、もっと何かデメリットがあるのかな…と思っていたのですが、致命的なものは無いようですね。
逆にそのバランスの良さが際立つ内容のものが良く発見されて、MT-09に三気筒エンジンを積んだ理由などもわかり、個人的にはちょっと調べてみて良かったなと思いました。
というところで、今回は以上です!